だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
櫻井さんが連れてきてくれたのは、海沿いにあるイタリアンレストランだった。
駅から車で十分程度のその場所は、やっぱり女性の好きそうな素敵な場所だった。
「櫻井さん、何でこんなとこ知ってるんですか?」
篠木が感心したように声を上げる。
メニューを選び終えてコーヒーを飲んでいた櫻井さんは、目だけ上げて自慢げに笑っていた。
「女性のクライアントを相手にすると、こういうところ知ってないと困るだろ」
「確かに。でも、調べるの面倒じゃないですか?」
篠木は立て続けに質問をする。
篠木の疑問ももっともだけれど。
まぁ、櫻井さんなら普通かもしれないな、と想う。
こんなに女性好みの場所を知っていても、使いこなす道はいくらでもあっただろうから。
海に面した壁は全面ガラス張り。
今日は柔らかい日差しが揺れて、とても綺麗な景色をしている。
少し雲はあるけれど、外の景色はきらきらと眩しかった。
レンガ造りの壁に、レトロな飾り。
昼と夜の表情が豊かに変化しそうな場所。
「うちには敏腕の秘書サマがいるじゃないか」
「あぁ、なるほど」
篠木がふむふむ、と頷く。
それを聞いてなんだか納得してしまった。
ニュースソースは水鳥さん。
水鳥さんは美味しいお店やお洒落なお店を、本当に沢山知っている。