だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
部屋の窓をそっと閉める。
レースのカーテンだけを引いて家の中に忘れ物がないかを確かめる。
自宅の電話は留守電になっている。
さっきまで使っていた充電器は最後にキャリーケースに詰め込んだ。
ゴミを出すことが出来ないので、申し訳ないけれど今日まとめて置いていこう。
小さな輪になったピンクゴールドのピアスを両耳につける。
ブルームーンストーンの小さな石のピアスとあわせて。
左に二箇所、右に一箇所あるピアスホールに馴染んだこの二つは、私のお守りのようなものだ。
スキニージーンズを少しだけ折り返して。
まだサンダルでも何とか過ごせる気がしていた。
シンプルなカットソーに、少し長めのカーディガンを羽織る。
肩から斜めに鞄をかける。
髪の毛はおろしたままでいいだろう。
黒のキャリーケースを持って玄関に向かう。
一週間近く部屋を空けるのは久しぶりで、なんだか寂しい気持ちになった。
「いってきます」
空っぽの部屋に向かって呟いた。
午後の日差しは少し翳り始めていた。