だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「それだけ優秀だからな。うちの営業もアシスタントも」
「よく耳にするよ、圭都の会社のこと。だから、うちも仕事を依頼してる。大手メーカーなんだけどな、うちの会社」
それは自信に満ちた声だった。
私情を挟んで仕事をするような人ではない、とその声だけでわかる。
仕事に対してプライドも責任も持った人の言葉。
「だから、うちも力を入れてる。篠木の仕事は正確だろう?」
「あぁ、その上的確だ」
「あ、ありがとうございます」
突然降った言葉に、篠木は動揺しながらも返事をした。
篠木は少し照れたような顔になったが、満足そうに少しだけ微笑んだ。
恐ろしく綺麗なその顔を、思わず三人で見つめた。
「その顔!狡いよなぁ。女にめちゃくちゃモテるだろ?ほら、俺は童顔だから、羨ましいんだよ」
「確かに、綺麗な顔だよな。人形っぽいって言うかさ」
廣瀬さんと櫻井さんの言葉に真っ赤になった篠木は、そのまま俯いてしまう。
その様子でさえ繊細だ。
「山本さんは、どっちが好き?童顔と綺麗な顔?」
それは、暗に廣瀬さんと篠木のどちらがタイプ?と聞かれているのと同じだ。
そんな答えづらい質問を投げかけられて、曖昧に笑ってしまう。
櫻井さんまで楽しそうに笑っている。
答えに困っている私を見て、楽しんでいるに違いなかった。