だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「でも、圭都がいるのに、どうして篠木君をうちの担当にしたの?」
射抜くその目線が、少しだけ鋭くなった。
櫻井さんの方が仕事が出来るのに、どうして新人の営業を大手メーカーにつけた?という暗黙の質問。
篠木が緊張で少し固まる。
「確かに仕事暦は俺のほうが長い。廣瀬との面識もあるから、俺との方が仕事は速く進むだろう」
「じゃあ、どうして?」
間髪入れずに廣瀬さんは質問をした。
逃げを許さない強い言葉。
「廣瀬を知っている分、俺が仕事をすると想像できるものしか出来ないだろう、と思った。でも、篠木なら。時間をかけてでも新しい魅力を引き出せるんじゃないか、と思ったんだ」
真面目で勉強熱心な篠木。
真面目だからこそ、何度も何度も思案したものが、とてもよい出来になる。
人より少しだけ時間はかかるけれど、絶対に妥協したりしない。
それに、時間をかけてもいい、と相手を納得させる話力もある。
櫻井さんとでは見つけられないものを、篠木となら作れる、と。
廣瀬さんはふっと笑った。
「確かにそうかもな。圭都は俺の頭の中を覗けてしまうだろうし。その点、篠木君はうちの新しい側面を見つけてくれる」