だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「そういえば」
廣瀬さんの声に、持っていたカップを置いて目を向ける。
にっこりと笑った廣瀬さんの顔。
けれど、目の奥が少しだけ鋭い。
「御堂さんからお話を伺いましたが、とてもドレスがお似合いだったとか。モデルも出来そうなほど、と褒めてらっしゃいましたよ」
その言葉に驚く。
御堂さんは沢山のモデルさんを見ていらっしゃるし、ましてや水鳥さんの隣にいた私をそんな風に言うなんて。
お世辞以外の何者でもない。
厭味かな、と思ったが、笑顔は崩さないでいた。
「それはお世辞です。女性はドレスを着れば誰でもそんな風に見えるのではないでしょうか」
「いや、それは違う。あれだけの女性ですよ?原石かそうでないかを見る目は確かなんですよ」
「原石・・・ですか?」
「そう。光り輝く何かがあれば、それは貴方の持っている『原石』だ。御堂さんは、人の中にそれを見つけるのが得意な人でね。実際に南さんが気に入られたのも、彼女の中に原石があったからでしょう」
「南にも・・・ですか」
「えぇ。実際のところ、南さんはもう自分で原石を磨いて輝かせている。だからこそ、あの表情と存在感なのでしょう」
自分の中の原石。
そんなもの。
考えたこともなかった。
自分で磨いて輝かせる。
水鳥さんは、私から見ても磨かれた存在だとわかる。
じゃあ、私は?