だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「そうは言っても、自分で磨ける人は少ない。だから、気付かせて磨く存在が必要なんですよ。僕や御堂さんのように」
「はぁ・・・」
私を磨き、輝かせること?
それがどういうことが、私にはよくわからない。
「育ててみたい、と思うんですよ。うちに、来ませんか?」
「・・・えぇっっ!!??」
「しっかり育てて差し上げますよ?私が、一からね」
この人、何こんなに簡単に『うちに来ませんか?』とか言っちゃてるの!?
言われた言葉に目を見張る。
興奮したせいか、顔が赤くなるのがわかる。
この人は一体何を言っているんだろう、とぽかんと口を開けてしまった。
「僕と一緒に、表舞台で仕事をしてみませんか?」
「表、舞台?」
「えぇ。サポートも素敵な仕事ですが、モデルではない広告塔として。広報に来ませんか?」
「それは、させない」
隣から強い口調が聞こえた。
冷静に、何の感情も読み取れないような声を出して、櫻井さんが廣瀬さんを見つめた。
「コイツは原石でも十分なほどだぜ?それすら分からなくなったか?」
自信満々の櫻井さんの顔。
目の奥が笑いを含んでいる。
「コイツの原石を見つけたのは、他でもない俺だ。だから専任のアシスタントにしてるんだよ」
目線がちらりとこちらに投げられる。
目の奥が少しだけ優しくなった。