だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「俺にしか、育てられないさ」
ふっと笑って、不敵な笑みを廣瀬さんに向けた。
大手化粧品メーカーの広報課長に対して、宣戦布告しているのと同じだと思うのに。
その姿が櫻井さんらしくて、無性に笑えてきた。
「相変わらず自信家だな」
「でも、間違いない、と思ってるだろう。」
「あぁ。今回は諦めるしかないかもしれないな。俺、ヘッドハンティング失敗したことないのにな」
「何がヘッドハンティングだ。純粋に口説いてるじゃないか。俺の部下はやらねー、って言っただろう」
二人は顔を見合わせて楽しそうに笑っていた。
その様子を見て、篠木と顔を合わせて笑った。
正直、どうしていいかわからなくて頭が回らなかったのも事実だ。
けれど、それを制してくれた櫻井さんがやはり有能な上司なんだな、と感心してしまった。
何よりも、この人の近くで多くのことを学びたい。
この人の仕事は、心を震わせてくれる。
それは、感動だったり、この人の熱意だったり。
仕事に対する感情が真っ直ぐな人。
純粋な気持ちか見え隠れするたび、その背中が私を切なくさせる。
触れるか触れないかの距離にある肩に、面影を乗せてしまいそうになる。
張り巡らされた空気が、まるで櫻井さんのものではないような感覚に襲われる。
時折。
ふいに。