だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「お待たせしました」
会計を済ませて、二人の方へ歩み寄る。
営業の人たちっていうのは、どうしてこうも存在感を放つのだろう。
少し逃げ腰になりそうな自分を、なんとかして押し込める。
「すみません。ご馳走になってしまって」
「いいえ、お気になさらないで下さい。うちの社員が無理を言って、時間を作っていただいたのですから」
「むしろ、僕が貴方に会いたい、と。無理を言ったと思うのですがね」
私がそう言うと、廣瀬さんはにっこりと笑っていた。
その言葉に、ちょっとそうかもしれない、と思って考え込んでしまった。
それを見た櫻井さんが、ぺしっと頭を軽く叩いた。
「山本。顔に出すぎだ」
「あ、すみません」
そのやりとりに、やっぱりくすくすと笑っている廣瀬さんを見て、つられて笑った。
クライアントといるのはずなのに、なんだかとてもリラックスしてしまっている。
「なんだか仕事って感じがしなくなってきましたね。圭都。俺、プライベートに切り替えてもいいか?」
「お前なぁ」
呆れた顔をしながらも、櫻井さんは気を許して笑っている。
その方が気が楽になるのは、櫻井さんも同じだからだろう。