だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「でも、今日はだめだ。一応仕事で来てるわけだしな」
「なんだよ。クライアントの意向くらい聞けよ」
「だったら、クライアントらしくしてろよ」
二人の顔を見て、思わず笑ってしまった。
私が笑っているのを見て、二人も笑った。
仕事中といいながら、すでにみんなプライベートモードになっているようだった。
「山本さん、とても楽しそうに笑いますね」
「山本は、いつもそんな感じだ。食べてる時とかもっと嬉しそうだぞ」
「それは楽しみだ」
「ま、食べる量より飲む量に驚くかもな」
「そんなに?昨日は全然飲んでなかったけどな」
「あぁ、どうせ猫かぶってたんだよ」
櫻井さんの言葉に少しむっとしながらも、実際に猫をかぶっていたのは確かなので何も言い返せない。
しぶしぶ目をそらすことしか出来ない私を、じっと見つめる廣瀬さんに気が付いた。
目が合うと櫻井さんに目配せをして、にやりと笑っていた。
なんだかもう、恥ずかしいのか悔しいのかわからなくなってしまった。
私もつられて笑っていたけれど。
「お待たせしました」
一人だけ、ちょっと畏まっている篠木を見て、三人で顔を見合わせた。
不思議そうに私たちを見つめる篠木。
その顔を見て、もう一度笑った。