だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
廣瀬さんの会社へ伺い、百貨店の販売スペースも見学させてもらった。
その後、心ばかりのお礼として、函館観光へとご案内した。
仕事とプライベートを程よく楽しんだ後、四人で向かったのは、駅から程近い居酒屋さんだった。
運転していた篠木の車を置くには、その場所が一番近かったこともある。
がらがらと空いていくグラスを見ながら、篠木の様子が気になっていた。
お酒は弱くないにしろ、緊張していると自分のペースを守るのは難しい。
緊張した雰囲気ではないけれど、篠木にとっては気を張る場面であることに違いなかった。
楽しそうに昔話をしている二人をよそに、そっと篠木に目を向ける。
にこにこと笑いながら、少し顔が赤らんできたように感じた。
「篠木。あんまり合わせて飲むことはないよ。間にソフトドリンクも挟んでいいから」
「大丈夫です。ありがとうござます」
そう言った篠木は、ちょっとほっとした顔になった。
とはいえ、クライアントである廣瀬さんの手前、早めに切り上げるなんてことも出来ないだろうな、と考えていた。
櫻井さんは平気な顔でお酒を流し込んでいるし、廣瀬さんもさもない、というように杯を空けていく。
私は二人と同じだけ飲んでも大丈夫だろう。
沢山の美味しい料理と冷たいお酒は、おのずと気分を軽くしてくれていた。
すっかりプライベートモードになっている廣瀬さんを見て、櫻井さんが来てくれて本当によかった、と思う。
篠木のこともすっかり気に入ってくれたようで、今後の仕事が楽しみになってきた。