だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版





――――――プルルルル、プルッ、ガチャ――――――




『お疲れ様、シグ』


「えっ!あ・・・お疲れ様です。水鳥さん、びっくりさせないでくださいよ」


『あら、だって電話番号出てるから。お休みの日にどうしたの?』




休みの日に会社に電話をすると、水鳥さんは必ず心配そうな声になる。

一番最初に名指しで電話を受けられたことなんて忘れてしまいそうな、優しい声で。




「休日を頂いて、ありがとうございます」


『あら、そんなのは当然の権利だわ。夏に頑張ったものね』


「いち早く頂いて恐縮ですけどね。これから遠方に行く予定なんです。それで、トラブルがあっても駆けつけられないな、と」


『そんなに心配しなくて大丈夫よ。こちらは大丈夫だから。ゆっくり行ってらっしゃい』




水鳥さんの声はよそゆきの声ではなかった。

そのことが、本当に仕事が落ち着いてきたことを教えてくれる。




「すみません。では、お言葉に甘えてゆっくりしてきます」


『そうするといいわ。あっ、ちょっと待ってね』




そう言うと保留音に切り替わる。

社内にいるのは森川くらいかな、と考えながら電話に出る相手を待つ。



とりあえず仕事は問題なく進んでいることにほっとした。




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