だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
十六夜...イザヨイ
「今日は本当にご馳走様でした。なんだか申し訳ありません」
「気にしないで下さい。山本さんに昨日出して頂いたのに、今日僕が払わないわけにはいかないですから」
「でも、会社のものとは別で・・・」
「山本。ありがたく頂いておけ。昨日と今日のナンパ料だ」
櫻井さんはそう言って、にやりと廣瀬さんを見る。
廣瀬さんはやれやれ、というように笑い私に向き直る。
まだ申し訳ない顔をしている私に向かって、にっこりと笑ってくれた。
「篠木君もいい仕事をしてくれてる。僕は、貴女の会社を信頼して仕事をしている。いい仕事のお礼だと思って下さい」
その言葉に、純粋に嬉しくなった。
隣で篠木も廣瀬さんにお礼を言っている。
今日私を連れて来た篠木に、廣瀬さんが感心していた。
篠木の一番の魅力。
真面目さ。
それが廣瀬さんに伝わったのだろう。
「休暇中の上司まで説得してくれて、本当にありがとう。これから、またよろしく」
「とんでもありません。こちらこそ、精一杯取り組ませて頂きます」
しっかりと握手をしている二人を見て、仕事をする男の人はやっぱり素敵だと思った。
簡単に挨拶をして、廣瀬さんを見送る。
廣瀬さんをホテルまで送る、と言って、櫻井さんも一緒に歩いて行った。
二人の背中は、とても逞しくて、少しだけ見惚れてしまった。