だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「俺、結局自分で足踏みしてたんですよ、いつも」
意外な言葉に篠木のほうへ顔を向ける。
いつも真面目に取り組んでいる篠木が、足踏み?
なかなか理解できず、じっとその横顔を見つめた。
そっと笑顔を浮かべた篠木は、やっぱりとても綺麗な顔をしていた。
「松山みたいに突っ走るのが、なんだかカッコ悪いなって思ってたんです。いつも冷静でいたい。いつも余裕でいたい、ってそればっかりで」
そう、あれたらいい、と。
誰もが想う。
けれど、それだけではいられない、と知るのだ。
誰もが。
「でも結局、気持ちの中でおろおろするだけで。人と、仕事に。真剣に向き合ってなかった気がするんです。いつも取り繕ってばかりで」
取り繕って、自分になる。
それが、感情を持った私たち『人間』の姿だと想う。
「今回は丸裸にされました。俺よりずっと仕事の出来る人と仕事をするって事は、そういうことだ、って」
「うん」
「櫻井さんと森川さんがどうして松山じゃなくて俺に、この仕事を振ったのか。それがわかった気がするんです」
「そっか」