だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
静寂...シジマ
「雨の音、うるさくない?」
「そんなの気にならないよ。何も音がないよりずっといい」
「そう、それならいいけど」
心配性だね、と笑う顔がこちらを向いている。
土日はお休みなので、今日は湊と一緒にいたかった。
病院に泊まる許可をもらうのは簡単だった。
だって、私は湊の『家族』なのだから。
「そんなに病人扱いしないで欲しいな。僕はこんなに元気なのに」
そう言っている湊は、本当になんでもないような顔をしている。
点滴をしているわけでも、酸素マスクをしているわけでもなく。
ただ、そこにいるだけ。
検査が続いているので、消毒液の匂いが染み付いてしまっているけれど。
「それに、お父さんも母さんもいるんだから。時雨がそんなに心配することはないよ」
湊の言うことも、ちゃんと理解している。
ここは、お父さんとママが勤めている病院だ。
何かあれば、二人がすぐに駆けつけてこられる場所。
『私が泊まりたい』と言った時に『しょうがないな』、と了承してくれたのはお父さんだった。
わがままを言っているのはわかっていた。
それでも、家で一人だけ、湊から遠い場所にいるのが耐えられなかった。