ウサギな彼氏
『え?』
玄関を開けると、そこにいたのはどこかで見たことのある可愛らしい少年。
「あんまり遅かったから、もう学校行っちゃったかと思った」
『え、っと。あのー……あっ!』
思い出した!
宇佐木君!
え、なんで家の前にいるんだ?
「もしかして聞こえてなかった?」
『え?』
「僕、金曜日に綾尾さんを送った帰り際に迎えに行くからって言ったんだけどな」
彼は、アハハッと苦笑いをした。
そんなこと言ってたんだ。
全然聞いてなかった。
あの日は自分でも状況についていくのに精一杯で、申し訳ないな。
仮にも彼氏の顔を忘れてしまっていたなんて。
『って!こんなことをしている場合じゃない!』
「こんなことって……」
『あ、』
彼は、明らかに傷ついた顔をした。
あぁーホントに申し訳ない。
決して悪気があるわけではないんだけど……
『ごめんなさい!』
あたし、本当に遅刻しちゃうから。
また学校で!
そう心の中で叫んで、あたしは走り出した。
彼が後ろで何か叫んでいたけど、遅刻の危機にいたあたしの耳には何を言っているのか届かなかった。