ウサギな彼氏



あたしは、元陸上部の底力でバス停まで全力疾走した。
あたしがいつも通学に使っているバスは発車寸前といった状態だった。


『そのバス!乗ります!』


このバスに乗り遅れたら遅刻確定だったあたしは恥ずかしさなど捨て、大きな声でバスを呼び止めた。

無事バスに乗ることができたが、あたしの声は史上最高の大きさでバス内の全員に届いていたようだった。
お陰でバスに乗った時、あちらこちらでクスクスと笑い声が聞こえた。
それどころか、運転手さんや見知らぬおばあちゃんに「元気だねぇ」と声をかけられた。


『あ……ありがとうございます』


あたし今、きっと茹でダコになってる気がする。
冬だと思えないくらい、すごく顔が熱い。
今さらになって恥ずかしさが込み上げてきた。


「ハールッ」


突然、誰かに名前を呼ばれた。
声の方を見ると、親友のキョウちゃんが小さく手を振っていた。

ニコニコというより、ニヤニヤに近い笑顔で。

あたしはこの笑顔を見た瞬間、さっきまでの暑さが嘘のように寒気がした。
例えるなら、茹でダコからブルーハワイ。

し、しまった……
まさかキョウちゃんに見られていたなんて……

きっと……
いや、絶対にからかわれる。
学校についたら即からかわれる。

もしかしたら今日から1週間、このネタでからかわれ続ける。


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