時は誰も待ってくれない 下
『…なんかあった?』
「えっと…」
かけたものの何かを言いたかったわけでもなくただ優の声を聞いてホッとしただけ。
何もないといえば嘘になるけれどこれ以上優を不安にさせたくない。
「ううん、なんでもないよ」
『ほんと?』
「なんか声が聞きたくなったの」
『俺も今そう思ってたところ』
電話越しにでもふっと笑うのが分かる。
その顔はすぐに頭に浮かんできて溶けていく。
あのね。あのね、ごめんね…
何がごめんなんだろう?
ただ初恋の人と会って会いたくないと言われ、
正直凹んだままの私は優に罪悪感がある。
『真由、今日俺んちおいで』
「わかった」
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