時は誰も待ってくれない 下
しばらくの間、俺は顔を上げられずにいた。
「いつまでも…泣いてちゃダメね…」
お母さんがハンカチを目に当てながら笑う。
それは無理して笑ってるようではなくてとても優しい笑顔。
「真由が幸せそうにしてるのに私たちが泣いてちゃきっと悲しむわ」
「はい…」
「優さん、しっかりしなきゃ!そんなんじゃお父さんになれないわよ?」
え…?
育てるって…俺があの子を育ててもいいのか…?
俺なんかが父親で…
「真由がそうしろって」
「真由が…?」
「えぇ、ずっと前にね」
懐かしそうな目で眠る真由を見つめる。
真由は、自分が死ぬことを知っていたのか…?
それを分かってて毎日過ごしてきたのか?
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