時は誰も待ってくれない 下
「さっきからそればっかだよ」
何度も何処へ行くのか聞いているが優は特に答えず前を向いたまま、片手は私の手を握っていた。
私も諦めて聞くのをやめる。
「はい、着いた」
車から出ると、何度か優と来たことがある大きなショッピングモール。
「…ッ」
ビルを見上げたとき、少し立ちくらみをして倒れそうになるのを優が支えてくれた。
「真由、体調悪い?」
「ごめんごめん、急に見上げたからかな?」
「どっか苦しいとことかない?」
「大丈夫だよ、優は心配症だなぁ」
クスッと笑うと優は安心したようにフッと笑った。
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