時は誰も待ってくれない 下
冬だし海風は冷たいけど少しだけ暗くなってきた世界に波の音が心地よく響く。
石段に腰をかけた優が私を引き寄せる。
「寒くねぇか?」
「ううん、大丈夫」
腰に腕を回している優の暖かさのおかげで本当に寒くなくて首を振ると力強く抱き締められた。
「ゆ、優…?」
「真由、覚えてるか」
肩に顔を埋める優がゆっくりと口を開く。
「俺は真由に恋した。初めてのデートでこの海に来た。この海で俺たちは付き合い始めた」
「うん…覚えてるよ」
私達の思い出の中にはこの海は本当に大切な場所でそれは優も同じなんだと嬉しくなった。
「真由」
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