時は誰も待ってくれない 下
「優、今日はいっぱいありがとう!」
石段に腰をおろして笑顔でそう言うと優は俯いてしまって何も言わない。
どうしたんだろ?具合悪いとか?
初めて見る優の姿に戸惑ってしまう。
「優、ご、ごめんね?具合悪いなら帰…ッ」
気づいたら優の顔はドアップにあって唇を押し付けられた。
別に今更、キスされても驚くことはないけれど
こんなにも突然なキスは初めてで、何よりも唇から伝わる優の切なさが私の胸を締め付けた。
「真由、聞いて欲しいことがある」
私の肩を掴んで真っ直ぐに私を見つめる。
そうだ。初めてあった時も、この海で告白された時も優はこうして私をただ真っ直ぐに私を見つめていた。
それが当たり前になっちゃって、久しぶりに見る優の真剣な瞳に何かを決意したことに気づく。
でも、私は少しだけ嫌な予感がして…。
聞きたくないと思ってしまう。
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