時は誰も待ってくれない 下
ずっとずっと私を見て傷ついていたんだ。
「ごめんなさい…」
ごめんなさいなんて言葉じゃ足りない。
そんな言葉で許してもらえるわけがない。
私は最低な人間だ…。
「本当に…ごめんなさい…」
それでも謝るしかなくて。謝りながら滲む視界のせいで優の顔がよく見えない。
「真由、一番に想う人の所へ行って」
「でも…」
「俺は」
私の言葉を遮り、真っ直ぐに私を見つめながら優は言った。
「俺は真由が誰の隣でいようと泣いていないならそれでいい。真由が笑ってくれるならそれでいいんだよ」
ずっと私は笑顔だったのに、優にはその笑顔さえも泣いているように見えたのだと言った。
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