時は誰も待ってくれない 下
病室の前に着いた私の体は震えていて自分の手を握っても体温すら感じないほどの震えと緊張の汗で呼吸は荒い。
落ち着け、落ち着け…。
ズキズキと痛む腹部に手を当てて必死に自分に言いかける。
後悔はしたくない。
コンコンと扉をノックすると、前よりも弱々しい声が耳に届く。
それだけで胸は溢れるように痛くて。
「中谷…」
中谷は相変わらずベットの上で苦しそうに横になっていて、前よりも酷くなった気がする。
頬は痩せこけていて目元にもクマが出来ている。立ったりしたら全身壊れてしまいそうな細さに何とも言えなくなる。
私の声を聞いた中谷がゆっくりとこちらを見て信じられないといったような顔をした。
「高…橋…?」
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