時は誰も待ってくれない 下
「中谷、あのね…」
「なんでいるんだよ」
「あのね、私…」
「会いたくないって言っただろ」
そう言うと中谷は目線を天井に逸らした。
その瞳は昔から変わらず、ずっと悲しそうだった。
でも今度こそ、その瞳を私は変えたいと、中谷の傍にいたいと思った。中谷の瞳は大切なものを失う事への恐怖や不安があるからそんなにも悲しい瞳をしているのだと知ったから。
「中谷、好きなの」
「何言って…」
「ずっとずっと出会った日から」
「…」
「悲しそうに空を見る中谷に一目惚れしたの」
「…」
「初恋は終わったんだって言い聞かせても中谷のことを忘れられなかったの」
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