時は誰も待ってくれない 下
「集中医療室…ですか?」
「えぇ、体調が急変したから…」
私は言いにくそうに話す看護師さんの言葉を最後まで聞かずに中谷の病室へと走る。

私とあった日から体調が急変したって山下くんが言ってた。私があんなことを言ったから?
ずっと私のことなんて忘れてると思ってたのに
山下くんは忘れたことは一度もないと言ってた。
どうして?分からないよ中谷…。
207号室に着いて乱れる呼吸を整える。
この扉の向こうに中谷がいる。こんなにも吸い寄せられるように体が動くなんて…。
軽くノックすると中から「どうぞ」と疲れきったような声が聞こえてきた。
そんな声にさえ胸が熱くなる。
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