時は誰も待ってくれない 下
中谷は泣いていて堪えきれずに、私も泣いていた。
「やっと夢が叶った」
中谷はこちらを振り返ると優しく、今まで見たことない笑顔を私に向けた。
「ずっと会いたかったー…」
私は嗚咽さえも我慢できず子供みたいに泣いた。
こんな形で思いを告げて、まさか中谷も同じことを思っていてくれたなんて。
ここまで支えてくれた優への感謝の気持ちと目の前で私を優しく見つめる中谷への愛しさで胸がいっぱいだった。
きっとこの瞬間、初めて中谷の心からの笑顔を見たと思う。
いつも一人で空を見ながら悲しそうに揺れる瞳はどこにもなかった。
ただ私を見つめて微笑んでいる中谷の手を握っていると、弱々しくだけど私の手を握り返してくれた…。
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