時は誰も待ってくれない 下
「中谷…」
ゆっくり扉を開けて窓の外を見る中谷の背中に声をかける。
中谷はその声に振り返ると信じられないといったような顔で固まっている。
体は前より白く細くなっていて風が吹いたら飛ばされるんじゃないかと思う程。
顔も痩せて疲れきっている。確かに前会った時とは全然違う。
呆然とする中谷がゆっくりと口を開く。
「なんで高橋が…?」
確かにそう思うのはあたり前だと思う。
だって私からさようならと言って、もう二度と会わないと決めたのに、その本人が来たんだから。
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