時は誰も待ってくれない 下
病室が夕日に照らされてオレンジ色の世界が広がる中で隼人は静かに口を開く。
「絶対、産めよ」
「…え?」
「産んで欲しい」
抱きしめる腕を離し、私を見つめる。
「誰の子でもお前の子なら俺の子だ」

聞いた瞬間、どれほどこの人は私を思ってくれているんだろうって思った。
話すことさえ躊躇っていた私はちっぽけで、
もっと早く知るべきだった、もっと早く伝えるべきだったって後悔してる。
隼人との子じゃない。
それでも、産んで欲しいと言ってくれる人がここにいる。
私を真っ直ぐに見つめて。
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