時は誰も待ってくれない 下
「いつか教えてやるよ」
ポンポンと私の頭を軽く撫でて隼人は窓の外を見ながら言った。
「…約束ね」
そんな隼人に、私はそれ以上は聞けなかった。
聞いちゃいけない気がした。
「あぁ、約束な」



空を見つめる隼人は悲しそうだった。
きっとこの約束が果たされる日は来ないんだろう。
命の大切さを誰よりも感じてるからこれから産まれてくる命を願ってるんでしょ?
だから産んで欲しいって言ってくれたんだよね?
どんなに不安でもどんなに思っても言葉にできずに
私達は「約束」でしか繋ぎとめられなかった。
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