時は誰も待ってくれない 下
その瞬間私の目からボタボタと涙が落ちて服に模様を作っていく。
さっきは気づかなかったけど隼人の手首にもシルバーのブレスレットが付けられていて、私と同じデザインだった。
おそろいだったの?
隼人の事だから恥ずかしくて言ってくれなかったの?
止まることなく溢れて視界が滲んでよく見えない。
「何で…何も言わないのよぉ…」
もう一度手に触れた時にはもう冷たくて
まるで氷に触れてるくらい冷たくて…。
現実が嫌でも心に突き刺さった。
「約束は…ッ!?」
少し遅れてきた優が顔を伏せる。
「赤ちゃんに何て言ったのか教えてくれるって約束したじゃん!」
涙声で一人、何も言わない隼人に話しかける。
その光景があまりにも悲観なのか看護師さんたちまで泣いていて。優は拳を握ったまま俯いていて。
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