時は誰も待ってくれない 下
「あの…これ…」
私の目の前にすっと差し出されたもの。
それが何なのか、誰のものかを理解するのに
そう時間はかからなかった。
「柴田くんの遺品で…ずっとつけてたみたいです」
知ってる。
それは私のとおそろいのブレスレット。
どうしてそれを?
「これ、彼女である高橋さんに渡した方がいいのかなって…」
「どうして私のこと…」
「…山下君からよく聞いていたので…」
そう言って微笑む彼女はきっと山下君が好きなんだろうなと思う。
「知り合いが居なくなっちゃうのは…悲しいです」
そっと私の手首にそれをつける。
私の手首に光る二つの輪。
結衣さんは私にブレスレットをつけながら
泣いていた。声を押し殺して泣いていた。
私の頬に雫が落ちて私も泣いているような気持になる。
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