半透明彼女
『斎藤…ジュンペー…です…』
予約なんて入れてなんか無いのに、恥かくだけ。
「あぁ…はい。斎藤純平様ですね?10時にご予約の。どうぞ、こちらに掛けて、お待ち下さい。」
と、これまた、僕には無縁のファッション誌を手渡しながら、イケメンの店員は促した。
「どっどうも。」
何が何やら、分からないけど?
どうやら、僕の名前で予約されているらしい。
綾ちゃんをチラッ見ると、何くわぬ顔で、僕が手渡されたファッション誌をパラパラとめくっている。
ふっと、視線を感じた方向を見ると、一人の女性店員が眉を潜めながら、僕を見る。
そこで鏡が僕の視界に入った。
あ、そういう事か。
鏡に移った僕を見ると、本が勝手にパラパラとめくられていた。
風も吹いていないのに。
こりゃ、不自然ですょ。全く。
慌てて、綾ちゃんの動作に合わせて、
僕が本のページをめくってるフリをする。