半透明彼女


『斎藤…ジュンペー…です…』


予約なんて入れてなんか無いのに、恥かくだけ。


「あぁ…はい。斎藤純平様ですね?10時にご予約の。どうぞ、こちらに掛けて、お待ち下さい。」


と、これまた、僕には無縁のファッション誌を手渡しながら、イケメンの店員は促した。

「どっどうも。」


何が何やら、分からないけど?

どうやら、僕の名前で予約されているらしい。


綾ちゃんをチラッ見ると、何くわぬ顔で、僕が手渡されたファッション誌をパラパラとめくっている。


ふっと、視線を感じた方向を見ると、一人の女性店員が眉を潜めながら、僕を見る。


そこで鏡が僕の視界に入った。


あ、そういう事か。


鏡に移った僕を見ると、本が勝手にパラパラとめくられていた。


風も吹いていないのに。


こりゃ、不自然ですょ。全く。


慌てて、綾ちゃんの動作に合わせて、

僕が本のページをめくってるフリをする。


< 12 / 20 >

この作品をシェア

pagetop