彼女の恋~小指の赤い糸~


さっきまで笑顔だったのに。
いつの間にか主任の顔からは笑みが消えていた。



「……もういい、早く行けば?」


「……」


「食堂に行くんだろう?」


急にその場の空気が変わった気がした。これ以上、何か言える雰囲気ではなく黙ってこの場を離れた。



食堂に行くと玲奈はもう来ていて食べ始めていた。


「そうか、千夏は今日衣裳合わせで早退か。
もうすぐ雅人と結婚するんだね」


玲奈の表情がくもった気がした。


「玲奈は東條君に気持ちが残っているんじゃないよね?」


「まさか。
今は田島が傍に居てくれるし……ただ雅人には幸せになってほしいから……」


「ごめん。
変な事、言って」


気持ちの整理がついていないのは私なのに……。
玲奈や千夏が羨ましいよ。
想ってくれる人が傍にいて……。



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