彼女の恋~小指の赤い糸~



「乗って」


てっきり歩きと電車で行くと思っていたのに主任は車でアパートまで来た。


駐車場に止まっていた黒い車の助手席側のドアが開けられて乗るように言われた。


一瞬、躊躇した。
車の助手席って特別で彼女とかの場所かな。
私は主任の彼女じゃない。



「どうした?」


主任は乗らずに突っ立っていた私を訝しげに見た。


「何でもないです」

そう返事をして乗った。
車のエンジンがかかり直ぐに走り出した。


「車、持っていたんですね」


「そうか中島さんを乗せたことは無かったっけ」


「初めてですよ」


「まぁ、マンションから会社までは近いから歩きだし遠出する時か実家に帰る時しか使ってないから。
中島さんが刑事ものを見たいって言うとは思わなかったよ」


主任は一瞬、私を見て直ぐに前方に視線を戻した。



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