彼女の恋~小指の赤い糸~
暫く考え込んでいた課長は私を見て苦しそうに息を吐いた。
「そんなに苦痛だったか?」
課長は怯えてしまった訳に思い当たったみたいだった。
違う。
あれは私が課長を裏切った罰なんだから。
私が主任を好きになってしまったから……。
ちゃんと課長だけをみていたら……。
だから課長のせいじゃない。
「なぁ。
もう少しも俺に気持ちは無いか?
もう一度やり直すチャンスをくれよ」
傷ついた表情の課長にこの人も、ずっと苦しかったんだと胸が痛くなった。
課長は少しずつ近づいて来て私の前に立つと手を伸ばして来た。
課長ごめんなさい。やっぱり怖い。
身体が拒否してしまって一歩後ろに下がった。
私と課長の間にスッと主任の身体が入って来て視界が遮られた。