彼女の恋~小指の赤い糸~
彼女の恋


課長が出て行って立ち尽くしていると。

主任に後ろから抱きしめられた。
安心できるぬくもりにほっとして暫く目を閉じて、じっとしているとクルッと向きを変えられて主任と向き合う。


ムスッとした顔がこっちを見ている。


「主任……?」


無言のままクイッと腕を引かれギュッと痛いくらいに抱きしめられた。



「やっと別れられたってのに……んで、また課長を追いかけてんの?」


「追いかけてなんか……課長が倒れそうだったから、しん……うげっ」


ちょっ……苦しい。更に抱きしめる腕に力が加わった。


背中に回していた手を握ってドンドンと叩いたら、やっと解放された。



このばか力っ。


「なっ、何なんですかっ。
いきなり……」


「紗季が……急に課長の後を追うから一緒に出て行くような気がして不安になった」


私が不安にさせた……。


「そんな事、あるわけないです。
私は主任からは離れません」



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