彼女の恋~小指の赤い糸~


課長が経理課に来てから数日が過ぎた。

今日は金曜日、残業はなく終業時間になり帰ろうと支度をしてエレベーターの前に立つと後ろから声を掛けられた。


「中島さん?」


振り向くと葛城課長がいて私の横に立った。

「お疲れ」


「お疲れ様でした」


ちょうどエレベーターが来て乗ると。
他には誰も居なくて二人だけの空間でシーンとした中、急に課長の声が響いてちょっとドキッとした。


「中島さんは仕事が出来て美人だし、さすが北川商事の白百合さんは違うね」


声を掛けられて言葉が出ないで黙っていると。



「君の事をもっと、知りたくなったんだ。
彼女になってよ」


えっ、か、彼女って……。
きっと、からかっているんだよね?


「葛城課長?
今のは冗談ですか?」



「本気だけど」


新入社員の頃は何人かに声を掛けられた事があったけど東條君にしか気持ちが向いてなかったから会社の人と付き合った事はない。



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