彼女の恋~小指の赤い糸~



「紗季さん、千夏です」


ドアを叩くノックの音と千夏の声がドアの外から聞こえて来た。


ふらつきながらドアに到達して開けると千夏とその後ろからひょっこり主任が顔を出した。


「具合、悪そうだな」


なっ、なんで主任が……。
千夏だけなら散らかってても大丈夫だって思ったのに。


「せっかく来て貰って悪いんだけど。
中は散らかっているし入って貰うのはちょっと……」


「何、言ってるんですか。
具合が悪いんだから動けないのは当たり前ですよ。
あっ、風邪薬買ってきました」


いやいや、やっぱり困るってノーメイクに、きっと酷い顔をしているはず……。それに、こんな弱ってる自分を主任には見せたくない。


そう思っている内にも二人は入り口の中に入って来てしまった。


「はいはい、病人は寝てて下さい」


「ちょっと千夏……」



ベッドの方に押しやられた。



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