彼女の恋~小指の赤い糸~
主任を無視してすれ違った。
「中島さん待って……」
今まで聞いたことがない弱々しい声につい足を止めてしまった。
「話しを聞いてほしい」
歩いて来る足音が聞こえて来た。
アパートの住人が帰って来たんだ。
立ったままの私達を訝しげに見ながら通り過ぎて行く。
いつまでも、こんな所に立っていたら、また誰かが帰って来て変な目で見られる。
「主任と話したくありません。帰って下さい」
歩を進めようとしたけど。
「頼むよ。中島さん」
やっぱり足を止めてしまった。
私の部屋には入れたくないし、近くにある喫茶店に主任を連れて行った。