有界閉領域
変化
リョウと付き合い始めて、1週間。






私は今まで1度も誰とも付き合ったことがない。







だから、リョウの事は好きとかそういう感じではないけど、付き合う感覚は楽しめた。







一緒に帰ったり、デートしたりと。




   


   ただ!








橋本先輩には『何で、橘な訳?悪いけどあいつが本気だとは思えない。戸塚みたいになるぞ?』







心配しての忠告だろうとは思うけど、好きで付き合っているわけじゃないから、『初めから本気じゃないです』とも言えず、『それでもいいんです』としか答えられなかった。







ただ、『何かあったら、俺が慰めてやるよ』って言われて、軽い橋本先輩が頼もしく見えたりもした。







千波と玲奈の反応は、まだ凄かった。







『彼女?!スゴ~~~~~ィ。リョウの彼女だよ!!!女は遊びにしか考えてなかったリョウだよ!!お似合い過ぎてヤバイよ~』








『ね~ね~。ランチはリョウも呼んで一緒に食べよ~。2人の美しい2ショット見ながら食事とか~最高じゃ~ない?それにここってある意味、聖域だから誰も邪魔できないしね?ね、そうしよう~』








この提案にリョウは意外にもOKだった。







『俺、昼休み寝てるから、あそこのソファー寝心地良さそうだしいいぜ』って事らしい。







だから、最近は4人で一緒に食べている。







うちの学校は、基本学食。







本当は学生食堂で食べなければいけないけど、執行部は別。







昼休みも活動があるから、大目に見てもらえる。








玲奈が電話で注文しておけば、昼の時間には執行部に届いているシステムだ。



 




執行部の中も生徒会長室、副会長室、書記室と部屋が分かれており、それぞれが豪華な作りになっていた。








先代の書記が置いたらしい冷蔵庫にレンジにポット。







ちょっとした部屋みたいになっている。







そして今も4人でくつろいでいた。







「そうそう、五月祭の代表って真由とリョウだって、さっき会長が言ってたよ」







「ええ~嘘。」







昼休みのひと時、玲奈が発した一言が真由を憂鬱にする。







「えっ?!って事は、リョウって次期会長候補って事???」







ビックリして、気持ちよさそうに寝ているリョウを、見てしまう千波。



   



   うちに学校はちょっと変わっている。







生徒会会長選びは、選挙ではなく現会長からの指名制。







五月祭の代表に選ばれるという事は、次期生徒会長になるって事。







余程の事でもない限り、この決定は変わらない。




   


   現会長が選んだのは、リョウだって事!!!







千波が驚くのも仕方ない。







現会長は学校一の秀才、前会長はオリンピック代表に選ばれたスポーツマン。






それに比べてリョウは・・・・カリスマ性と認知度はあるけど、ただのタラシだし、勉強も?できているのか不明だし。




   


   しいて言えば、美形だって事かな・・・






「それでね、会長にリョウが・・・」






「俺が、真由と一緒じゃないと代表にならないって言っただけ。」







いつから起きていたのか、玲奈が言おうとした言葉の続きをリョウが突然言った。







「キャ~。ラブラブだね~。」






「じゃ~なきゃ、誰がめんどくせー事やるかよ。」




   


   確かに面倒くさい。








五月祭とは、5月下旬に開かれる、格私立高校が一斉に同じ日に、3日間するオープンキャンバス。








中学3年生が対象で、五月祭で人気が出れば入学希望者が増えると言う事もあり、各学校がしのぎを削るビッグイベント。








真由も五月祭で学校をはしごして、ここに決めた。







その代表となると学校の顔になると言うことで、考えただけで気が重くなる。








「その、補佐は決まっているの?」







やるからには、サポートしてくれる補佐の存在も大事になる。








「一応~私と、千波はバスケでプレゼンだから無理だから、3組の戸塚さんでしょ。後はまだはっきり決まってないけど、もしかしたら、私と戸塚さんだけかも・・・」








「戸塚弥生???それって・・・やばくない?」







私は全然構わないけど、リョウのいる前では、言ってはいけない言葉だよ。







でも、言ってしまうのが千波で・・・気づいてもいない。







「ヤバイって何がだよ?」






リョウの声のトーンが変わった・・・







「えっ、その・・・」







言葉に詰まる千波。








「弥生は何もしねーよ。小中高って一緒だからな、腐れ縁ってやつ。だからあいつは、何もできねーの」




   



   そんなに長い付き合いだったなんて、知らなかった。



   



   戸塚さんの事はよく知らないけど、リョウがそう言い切るならそうだろう。




   


   ただ、一緒にやるとなると・・・・やっぱり気まずいよ。







「そ、そうならいいの。気にしないでね」







慌てて弁解した千波だけど、たぶん私と同じ事思ったに違いない。






だって、今でも好きな人が付き合っている女の補佐なんか、誰だってやりたくないと思うから。




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