有界閉領域

イラつく

見送りの時間は、五月祭3日間で1番最悪だった。





ムッとして笑顔のえの字もないリョウ。







形式的に「今日はありがとうございました」と頭を下げ、ロボットのように言葉を繰り返すだけで、感情ゼロ。







怖いオーラ全開で、誰も来るな!!って目で訴える。







女子中学生も、ビビった様子で、遠くからリョウを見ているだけ。







おかげで、いつもより早く見送りの時間は終わってしまった。




   


これから生徒会室で、役員の打ち上げが待っているというのに。




   ・・・ものすごく気まずい・・・







みんなが生徒会室に向かおうと歩き始めても、リョウは動こうとしない。






チラッと見た顔は、怖いほど不機嫌。






「リョウ、行かないの?」






恐る恐る聞いてみる。






「さっき、レイが通った時、目で何か合図しただろう?」




   気づかれた!!!






女子生徒の集団に紛れて、レイが校門付近に来た時、「ありがとう」って感じでハンカチを見せ、軽くウインクした。






ほんの一瞬の出来事だったから、リョウは気づいていないと思ったのに・・・




   しっかり見られていたとは・・・






「あ、うん。ハンカチ貸したから、そのお礼だと思う」






「それだけじゃねーな。あいつと何かあっただろう?」







「何かって何?何もないわよ」






心臓がバクバクし、変な汗が流れる。



   リョウは鋭い!!
 


   落ち着け私。動揺するな!






ガシっと肩を掴まれ、瞳を覗き込まれる。




   ダメだ・・・動揺してしまう・・





「お前って本当に嘘が下手だな。何かありましたってバレバレだし」




   うっ・・・



   私って嘘が顔に出やすいのかも・・・






「レイが女に愛想よくするなんて、まずありえねーの!あるとしたら気に入った女だけだ。あいつは好きか嫌いしかないから、どうでもいい女には、話すらしない奴なんだよ!」



   そうなの・・・






「・・・案内を頼まれて案内しただけだよ・・・」







正直に話さないと、真っ直ぐ見つめる目は、ごまかしきかない。



   でもキスしたとは言えないよ・・・






「2人だけで?」






「うん。・・・リョウの弟だから、私が行ったほうがいいって言われて・・・」






「それで?」





「案内しただけよ・・・」






「それで?」






言葉に詰まる。






ちゃんと言うまで、リョウは掴んだ肩を離してくれそうにない。







「音楽室まで案内した時、だ、抱きつかれたの・・・戸塚さんに見られて、さっきの喧嘩が始まって・・・」




   キスしたって事は、やっぱり言えなかった。







リョウは真由をじっと見つめたまま、黙って何か考えているようだ。







「はぁ~ん。なるほど。生物室っておかしいと思ったんだぜ。あの時、中にいたんだな!」







真由はコクンと頷く。






「その上、抱きついたって?はぁ~。何考えてんだ?あいつ、ふざけやがって、それで弥生に叩かれてるんじゃーあいつも馬鹿だな」






呆れたように、リョウは呟いた。






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