有界閉領域
揺れる心
夏休みが近づくにつれ、学校中が浮かれモードに入っている。







執行部も夏休み中の活動は、後半にしかない為、夏休みはたっぷり休める。







今日は役員全員が集まって、生徒会室で会議をしていた。







真由と千波は、いつもの様に副会長室でくつろいでいる。







千波は、携帯ゲームをしながら、楽しそうにしている。







「真由は、夏休みどこかに行く?」








今年は、祖父の家に3週間ほど行こうと思っている。







私を題材にして、絵を描きたいと言ってきたからだ。








萌はホームステイでアメリカに行くし、画廊を経営している母は、海外に買い付けに行くと言っている。








父は商社に勤めており、1年の半分は海外にいる。









家の事は、通いの家政婦さんがやってくれているので、生活面で困る事はないから、祖父の家は1週間でも良かったが、誰もいない家に1人でいるのも寂しいので、行くことに決めた。









「私は、おじいちゃまの家に3週間ほど行こうと思っているの。だから今年はバスケのお手伝いが出来なくてごめんね」









「それは、全然いいよ。主力が抜けたから今年は予選で敗退だと思うし、新米マネージャーが良く動いてくれるから助かるのよ。」









3年の先輩が抜けてしまったから、大変な時期だろうけど、新しいマネージャーがいてくれて良かった。









千波は、急に立ち上がり真由の隣に座るとヒソヒソ話をするように、顔を近づけてきた。







「ねぇ~。レイ君は、相変わらず?」








隣の部屋だから聞こえないのに、千波は小声で聞いてくる。







「会ってはいないけど、毎週話はしているよ」








『ハンカチを返したい』と自宅に電話があったのは、次の日。








自宅の電話番号を探し出した行動力はすごいと思ったけど、『今、家の前にいる』と言われた時は、飛び上がるほど驚いた。









ちょうど家には誰もいなかったから良かったものの、それでも自宅に上げる勇気はさすがにない。







近くの公園に移動して、ハンカチを受け取った。







『これからも電話していい?』と聞かれても、当然断るしかない。









『リョウの彼女だから、電話も会いに来るのもやめてほしい』と言ってその場は、納得して帰って行った。








これで終わったと思ったのも束の間。








次の日にはまた、自宅に電話があり『我慢できないよ~。真由と話したい』とストレート過ぎる一言に、私もほだされた。









『会う事は出来ないけど、週1回なら話してもいいよ』とつい言ってしまい。








「へぇ~。でも会ってはいないんでしょ?だったらいいんじゃない?話ぐらいしたって。」








「・・・うん。でも後ろめたいって言うか・・・」








「気にしなくていいよ。リョウだって同じようなものじゃない?」








   確かに。







レイの話によると、毎週のように戸塚さんの家族がリョウの家で食事をするらしい。







親同士が仲がいいから仕方ないが、戸塚さんは別に呼んでいないらしいが、勝手に来ては、いつもリョウの世話を焼いているって言っていた。







でもリョウは、そんな事一言も言わないし、私も聞きもしない。








「なんかぁ~。真由とリョウってすっごくお似合いだけど、ラブラブオーラが出てないって言うか、他のカップルみたいな感じがしないから、レイ君とか戸塚さんが付け込んで来るんじゃない?」






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