有界閉領域
おじいちゃまの家に来て、今日で3日。








モデルといってもじっと座っているとかそんなんじゃなく、普段の生活から私の仕草や表情を参考に絵に描いている。








今回のテーマは、深海の女神だそうで、女神が私らしい。








抽象的すぎて今は想像できないけど、おじいちゃまの絵は誰が見ても綺麗で繊細で素敵な絵。








だから出来上がりがすごく楽しみだ。








今朝も気持ちいい潮風が窓から入ってくる。








高台にあるおじいちゃまの家から見える、海は最高に綺麗だ。








午前中は、夏休みの課題に取り組む。








その間は、通いの家政婦さんが家の掃除に洗濯と食事と、1階のおじいちゃまの生活スペースをいつも通りにしてくれている。








真由の生活している2階は、自分で掃除するからと、家政婦さんには頼んでいない。








おじいちゃまは、別棟にあるアトリエで創作活動中。








気分が乗れば、1日中描いていたり、気分が乗らないときはブラリと散歩に行ってしまう。








今日は気分が乗らないのかどこかにブラリと出かけてしまったみたいだ。







   ピンポーン。ピンポーン。






午前中のこんな時間に、宅急便の人だろうか?








気にはなったが、家政婦さんが応対してくれるので、真由は部屋で課題の続きをしていた。








「真由さん~。お友達がいらしてますよ~」




   
   えっ????友達????



   
   玲奈ちゃんかな?







夏休みに入る前に、おじいちゃまの住所教えたから来てくれたのだろうか?








玲奈ちゃんかも知れないと思い、露出度が大きいノースリーブのワンピースのまま、気にせず降りて行った。







「レイ?何で??」








玄関に立っている人は紛れもなくレイで、しばらく見ないうちにまた背が高くなって大人っぽくなっていた。








「真由~。会いたかったから来ちゃったよ。途中ちょっと迷ったけどね。」








レイの行動力は、いつもながら驚く。







『会えないから電話でね』ってあれほど言ったのに・・・・








目の前でにっこり笑っている笑顔を見ると、帰りなさいとも言えないよ・・・








それにしても夏期講習は?今日は夕方からとか??







「真由さん、お茶でも入れますから」








玄関先で話している真由に、お手伝いさんが中に入ってもらったらどうですか、と言うようにそう声をかけてきた。









リビングのソファーに腰を下ろしたレイは、物珍しそうに周りをキョロキョロ見ている。









おじいちゃまの好きなバリ風のインテリアが、気に入った様子だ。









「すげー南国のホテルみたいだね。おばあ様のヨーロッパな感じもいいけど、夏はこっちの雰囲気がいいね。」








大人っぽく見えたのは、少し日焼けして髪が伸びているからだろう。








切れ長の目にかかるゆるいウエーブの前髪が、似合い過ぎてドキッとする。








「夏期講習は、どうしたの?」








「ん~。正確には夏合宿だったんだけど、直前で断って今はおばあちゃまの家から週3回通っているよ。」








それって・・・サボってるって言ってるようなものじゃない!








「受験でしょ?大丈夫なの?」








中3の夏休みがどれほど大事か、レイは分かっているのか不安になる。







「全然余裕~。俺って頭いいから~」








そうは見えないけど、人は見かけによらないものだから、意外と頭いいのかも。








「真由って、すっげー色白だね~。血管とか透けて見えてそう~」










言われて初めて、自分がすごく露出の高いノースリーブを着ていることに気づいて恥ずかしくなる。









レイは、恥ずかしそうにしている真由の事などお構いなしに、ジロジロ見てくる。







   兄弟揃って女に慣れすぎ!!







「わ、私、ジュース持ってくるね」






慌ててキッチンに入り、一息ついた。


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