有界閉領域
「真由ちゃんの彼氏?カッコいい子ね。」







お手伝いさんは、とんでもない勘違いをしているみたいで、でも彼氏の弟とか説明する方がややこしいい気がして、やんわり否定する。










カーディガンを羽織り、ジュースとレイが持ってきたケーキをテーブルの上に置いた。









何も言わなかったが、カーディガンを羽織っている真由を見て、レイはクスっと笑った。










有名店のケーキはどれを食べても美味しい。










品良くケーキを食べているレイの姿は、リョウと同じでやはり絵になると思ってしまう。








「リョウから連絡とかあるの?」









突然の言葉に、いちごを喉に詰まらせるかと思った。








カナダに行って、初日だけ夕日の写メを送った。








『綺麗だね』それ以上それ以下でもないただの返信。








リョウは付き合ってからメールや電話など殆ど無いに等しい。








2人で話している時も、楽しくて仕方ないといった雰囲気でもない。








付き合ったことがないから、比べるものもなく、こういうものだと真由はそう思っていた。









だから、千波にラブラブオーラがないって言われるのかも・・・









「あるわよ。だって付き合っているんだよ?あるに決まってるじゃない」








こう言う言い方は、まずかったと言ったすぐに後悔した。









レイは、疑わしい目を向け完全に嘘を見破っている。








「リョウと付き合って真由ってそれでいいの?」








何が言いたいのか分からない。








固まってしまっている真由に、レイは真剣な顔をした。









「弟の俺が言うのも何だけど、リョウって何考えているかわかんねーところあるし、完全秘密主義者だろう?それにカナダにだって・・・」









関屋さんの事を言おうとしたのだろう。









「関屋さんの事?戸塚さんが親切に教えてくれたから知ってるわよ。私は全部知っていてそれでもいいの。」









これは自分への言い聞かせでもある。





   2番でもいいって決めたから。









「何でだよ。カナダであの人に会ってても平気なわけ?俺にはわかんねーよ。俺だったら真由をおいてカナダなんかに行かねーよ・・・」









えっ??今のって・・・もしかして・・・レイの本心??








レイは気まずそうな顔をしてうつむいてしまった。






「レイ?」







「俺じゃーダメなのか?俺マジなんだよ・・・会えないって言われてもやっぱり会いたいよ・・・」








うつむいたままのレイの弱々しい言葉。






自信たっぷりのレイからは想像できない姿。






優しい言葉をかけてあげようと思っても、頭には何も浮かばない・・・







付き合っているのがレイだったら、もっと簡単だったろうに・・・・








「レイの事、リョウの弟ってしか見れないの・・・ゴメンネ。それに、リョウに他に好きな人がいるって初めから何となく分かってたし・・・それでもいいって思うから。」










「・・・よくないよ。リョウなんか、やめとけよ。真由の事ほったらかしで連絡もしないとか、おかしいよ。」









レイはいつも率直で、欲しいものは欲しいと言える人。








でも、私は欲しいものを欲しいと言えないし、自分の気持ちを隠してしまう。






   本当は、真っ直ぐなレイに惹かれているよ・・・・






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