有界閉領域
「ちょっと大きいけど、よく似合ってるよ」








コウが持って来てくれたTシャツは、洗濯のいい匂いがした。








かなりブカブカだけど、コウが守ってくれている気がしてちょっとだけ嬉しかった。








「そうそう、おじいさんが、落ち着いたら電話して欲しいって。あっちも警察の対応で忙しそうだから、迎えは遅くなるとか言ってたよ」








「うん、ありがとう。迷惑かけてゴメンネ」








着替えの他にパンやジュース、お菓子などコウは買ってきてくれていた。









その優しさが嬉しくて、泣いてしまいそうになるのをグッと堪える。








「真由、電話してこいよ。おじいちゃん心配してるよ」









ベッドに横になったまま、2人のやり取りを聞いていたレイがそう言った。







コウから携帯電話を貸してもらい真由は部屋を出た。






「真由、大丈夫か?ケガしていないか?」






「大丈夫、ケガしてないけど、レイがケガして・・」








おじいちゃまの声を聞いたら、ホッとして一気に涙が溢れ出した。






泣いている真由に、おじいちゃまは優しく応えてくれる。








おじいちゃまの話では、アトリエと母屋が離れているから犯人は、同じ家だとは知らなかったのだろうと、後、盗まれた物は、アトリエを確認しないと分からないが、たぶんないという事。








見られたことでとっさに真由を襲ったから、証拠物がいくつか残されているから、捕まるのは時間の問題だろうと。









「真由・・・何もされなかったよね?」






おじいちゃまの言いにくそうな問いかけに、足が震えた。






   押し倒されて・・・恐怖で記憶がない・・・・







着替えたとき、引っかかれたような傷はあったが、それ以上は何も異常がないと思う。








「レイが助けてくれたから、何もされなかったよ・・・」








「そうか・・・良かった。もし?って考えたらおじいちゃん犯人を生かしちゃいられなくなるからな・・・」








   レイがいなかったら・・・どうなっていたのだろう・・・






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