有界閉領域
しばらくして、レイの着替えを持って来たコウだったが、尋常じゃなくレイにしがみついて泣いている真由の姿を見て、声をかけられなかった。







さっきコウの父が言っていた『彼女が心配だ』を思い出す。







ショックな事があってしばらくすると、少し冷静になる。







その時が『危ない』という、精神危機。








目の前にいる真由が正しくそうだ。








『コウ、ありがとう』








『・・・おじい様が荷物持ってきたけど、会わない方がいいな?』








『今は無理だろう。コウの方から上手く状況説明していおいて』









ぼんやりレイとコウの会話が聞こえるが、ただ聞こえるだけ。








頭の中には一つも入ってこない。









『この部屋には誰も入らないように言っておくよ。後、リョウから電話があったけど・・・・何て言っていいか・・』










『そのまま言えばいいさ。どうせ帰って来れねんだから』









『それが、明日の便で帰るって。真由の事すげー心配していて、俺、あんな取り乱したリョウの声って初めて聞いたよ・・・』









『ふん。今更カナダにいる事、後悔しても遅いし。』








『彼女だから心配するだろー?』








『俺だったら、彼女おいてカナダには行かねーし。それに俺、真由にマジだから』







『・・・おい。マジって・・・』








『マジはマジって事』







『はぁ~』







コウはため息をつき、レイにしがみついている真由を見て、またため息をついた。






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