有界閉領域
リョウの家は、噂以上に大きな家だった。







閑静な住宅地にある一際大きな門構えの、和洋折衷の家。








正面は日本家屋で大きな日本庭園が真ん中にありそれを囲むように左右に伸びた洋館。









左側の洋館にリョウとレイの部屋がある。









リョウの部屋は、高級スイートルームを連想させるシックでモダンな部屋だ。









無駄なものがない分部屋が広々としていて、真由を落ち着かない気分にさせた。









「適当に座ってよ。」









真由の家も裕福な家庭に分類されるが、この家や部屋を見たら自分家が中流家庭に思えてしまう。











レイが退院してお見舞いに来たはいいが、レイの部屋にはお友達が来ているらしく、それも女の子ばかりらしいが、リョウが気を使ってくれて、今はリョウの部屋に通された。











「レイが何が好きか分からなかったけど、ここのケーキ美味しいから持ってきたけど、お友達が来ているんならお腹いっぱいかもしれないね」











リョウは帰国してそのままになっている荷物の片付けをしている。










真由は、出された紅茶を飲みながら、独り言のようにそう言った。










「何か言った?」











寝室から顔を出したリョウが、ふと聞いてくる。










「ううん。何でもないよ。気にしないで片付けしてね」









それにしても、落ち着かない。










リョウってこんな広いところで落ち着くのだろうかとふと疑問に思ったりもした。










なにげに見たテレビ横の本棚に、不釣合いな物を発見する。










あれって・・・・萌のキーホルダーの色違い???










カラオケボックスに忘れてきて、次の日リョウが届けてくれた萌のキーホルダー。










思わず手に取って見てみる。









形が微妙に違うが同じシリーズの色違い。










でも、なぜこれが、ここに????










「あっ!」










リョウの驚く声。










「これって、私のキーホルダーの色違いだよね?」










見てはいけない物だったのだろうか、リョウはすごく戸惑っている。










「偶然、店で見つけたから・・・買った」









    買ったの???





    リョウがキーホルダーを???





    うそでしょ???







ブランド物しか身に付けないリョウが???くまのキーホルダーを???









笑ってはいけないのに、笑ってしまった。










「真由が大事そうにしてたから、俺も同じ物が欲しくなった。でも同じ物がなくて色違いを買った・・・」










えっ・・・。それって・・・・。うれしい・・・・。










でも、いまさら萌のキーホルダーだって、それもどうでもいい物だって言えない。










「俺、結構前から真由にマジになってたから・・・ってか、俺らしねーな」










そう言って照れるリョウ。









あの事件から、リョウが変わった?そのように見えるだけ?










いつもクールでモテモテで余裕たっぷりの自信家が、今は普通の人に見える。











照れたり、泣いたり、意外な一面のリョウが、心を占める。











やっぱり、私、リョウの事・・・好きだな~って実感した。




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