有界閉領域
最悪
   なのに・・・現実は・・・






ダルそうに歩く見慣れた長身の目立つ男。







隣にべったり張り付いている派手な女。







話し声は聞こえなくても、隣の女が必死に男の機嫌を伺っているのは、一目瞭然。




   


   今日に限って、何で!!


   



   いつもこの時間に会ったことないのに・・・







目の前を歩くリョウと隣のクラスの戸塚弥生。







噂話は好きじゃないけど、戸塚さんがリョウにゾッコンだとかは聞いたことがある。







『リョウの金魚のふん』って千波が言ってたっけ。



   


   教室に入る前から会うなんて・・最悪。






「おはよ~ぅ春日ちゃん。今日も綺麗だね~」







肩ごしに聞きなれた声を聞いてまた憂鬱になった。








「おはようございます。橋本先輩」






ギュッと笑顔に切り替えて橋本先輩を見る。







橋本先輩はバスケ部のキャプテン。









友達の千波がマネージャーをしていて、千波に頼まれて手伝いをしたのがきっかけで、自然と橋本先輩とも話すようになり、1年の時から『俺と付き合おうよ』とかバスケ部の部員と話していると『春日ちゃんは、俺のだから気安く喋んな!!』とか、軽い感じで言っている。









どこまでが本当で冗談なのか分からないところがあり、イマイチついていけないところがある。









頼りになる良い先輩なんだけど、こう言う軽いノリにたまについて行けない。









「朝から見せつけてくれるね~。そう言えば橘と同じクラスだって?春日ちゃん気を付けないと。」








冗談で言っているってわかっているのに、顔が強ばる。





「そ、それはないでしょ」







無理に作った笑顔がぎこちなかった。







橋本先輩は、一瞬探るような表情をしたがまたいつもの笑顔に戻っている。








「やっぱ俺と付き合っちゃいなよ~。この間もサッカー部の奴に告られたでしょ?俺と付き合えばそう言う事なくなるって、俺ってこう見えてヤバイ先輩だからさ~」








冗談ぽく言っているけど、何となくわかる。







橋本先輩は、3年の中でも一目置かれているって千波から聞いたことがあったから。








「今のところ間に合ってます」








「ひぇ~つれないな~。でもそんな春日ちゃんが好きだな~」




   



   こういう軽いところがなければ、良い人なんだけど・・・









橋本先輩のおかげで、目の前の2人もさほど気にならなくなっていた。








そのままの流れで、教室まで送ってもらい、






朝のブルーな気持ちもずいぶん良くなっていた。

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