小さな恋のうた~short story~
どのくらい泣いただろうか。
竜桜の服を随分濡らしてしまった事だけは暗くても分かる。
だんだん恥ずかしくなっていた…今さらだけど
「ご、ごめんなさい…」
「大丈夫、大丈夫。……全部吹っ切れた?
」
この人は分かっていたのだろう。
今の“涙“が怖かっただけじゃない事を…
色々な意味が込められている事を…
「はい。ありがとうございます」
自然に笑みを浮かべられた。
心の奥がスッキリした気分だ。
次に琥珀に会うとき…前みたくいれる。
「じゃあ俺は行くね。あ、君の名前は?」
「私は……紫苑です。」
李紫苑とは言いたくなかった。
周りみたく見られたくなかった。
何でかしらないけど……
いい名前だねって暖かい笑みを浮かべて言った彼にほんの少し顔が熱くなった。
「俺は…息吹だよ。またあおうね」
“またあおうね“
その言葉が凄く嬉しかった。
そして今はまだ知らなかった。
“またあおうね“がすぐに訪れることを……
私達は出会ったんだ。
哀しい恋をするお互いに……
想われる幸せを知らない少女と
見守ることしか出来ない青年が
出会ったんだ。
『私たちが出会った理由』