かさ【短編】
『助けて…熱い…熱いよぅ…』
どこからか声が聞こえてきました。
『どこ?どこにいるの?』
暗くてよく見えない中、手探りで声の主を探して行きます。
『あたしは…ここ。早く助けて…体が溶けちゃう』
声を頼りに探すと、固いものにぶつかりました。
かすかな月明かりで見えるのは、半分焼け焦げたフランス人形。
元は金色で美しかったであろう髪は、ほとんどがちぢれ、青く美しいガラスの瞳は哀しげです。
淡いピンクのドレスは見る影もありません。
『あたしの下で、まだ火がくすぶってるの。あたしを…どこかに連れて行ってくれない?』
かさは、勿論了解しました。